2005年03月09日

本番であがらない方法

どうしたら本番であがらないで演奏できるかというのはステージに立った経験のある人ならプロアマ問わず誰でも悩んでいる問題だと思います。

中峰秀雄さんがサイトで「いかに本番で実力を発揮するか」をテーマにした訓練方法を書かれています。それがとても実践的なんですね。一部を抜粋しますと、「朝起きてすぐに本番で演奏する曲を弾き、それを録音する。ミスした部分を練習し直す」とか「足台をいつもと違う高さにして弾いてみる」とか「サングラスをして弾いてみる」、「家族に協力してもらって演奏中にわざと騒音を出してもらい、それでも弾ききるように練習する」などです。後の三つは、要するに本番で起こりうるハンディを練習においても体験しておくということですね。

確かに、私の経験からしても、本番でミスするとガッカリしますが、そこでもう一度気を取り直してミスした部分を重点的に練習すると、次回は確実にミスが減ります。やはりミスする部分というのは「弱い」ところですから、後から考えるとミスするべくしてミスしている訳です。ただ、普段の練習ではある程度弾いてくると「もう弾けるようになった」と思いたい気持ち、まあ逃げですね、それが強くて、その弱い部分を見ないようにしているのですね。朝という一番身体的に不安定な時に演奏し、かつ録音して聞き直してみると、その弱い部分と否応なく向き合わざるを得なくなりますから、弱点克服には最も良い方法だと思います。ただ、実際にやったら相当辛いと思いますけどね。いつもは弾けていたものがぼろぼろになるのですから。逆にそこでミスが出なくなったら「いつでもこの曲は弾けるぞ」という相当大きな自信になると思います。

また、いつもと違うハンディを付けるというのもいい方法だと思います。実際、ステージというのは観客の視線というプレッシャーもさることながら、やたらと寒い会場だったり、ライトが強かったり、あるいは暗すぎたり、椅子が高すぎたり低すぎたり、それでいてプロではないので十分なリハーサルなどできる筈もなく、ぶっつけ本番で弾かなければならなかったり…等々、そういった状況によって更に緊張感が増すという事態が往々にして起こるものだからです。そうでもなくても、調弦の途中で聞いている人を待たせる時間に耐えられず、「もういいか、適当で」などと思ったりするのもよくあることです。そのような、暖房・冷房の効いた部屋でリラックスして弾いている状態とのちょっとした差が意外に足を引っ張るものなのですよね。本来、本番というのは確実に練習とは違った状況に置かれるものである訳で、特にステージ経験の少ないアマチュアにとっては、本番とは常に初めての状況で弾くものと思っておいた方がいいと思います。

そういえば、わざと集中力を乱すようなことをやってもらうというのはゴルファーのタイガー・ウッズもやっていたそうです。たとえば、ショットの直前に彼の父親が突然目の前にボールを投げ込んだりして、それでも完璧に打てないと叱られたそうです。同じですね。

この練習方法がことに興味深く思えたのは、演奏時の集中力というのものについて考えさせられたからです。というのは、よく自分の殻に閉じこもって完全に外界を遮断してしまったかのようにギターを弾く方がいます。そういうやり方は確かに集中力という意味では優れているような気がします。まあ、実際には演奏中に演奏に集中しているかどうかは本人以外には分からないですけどね。何か別のことを考えているのかも知れないし。ただ、できる限りその場の状況に左右されないようにするという意味ではギターと二人だけの世界を作るというのはいいように思えます。しかし、よく考えてみると、自分の世界に閉じこもってしまうと、その世界を破られた時のショックも非常に大きい筈です。夢から覚めた時に、一瞬自分がどこにいて何をしているのか分からなくなってしまうようなものです。逆説的ですが、集中力を乱された時に集中を乱されないようにするためには、常に外界を意識して何が起きても大丈夫なように準備しておかないといけない。集中を乱されないためには演奏だけに集中してはいけないのです。むしろ、一瞬にしてその場の状況を把握する能力と余裕があった方が、集中を乱される時間を極限まで短くできるのだと思います。中峰さんも、リサイタルの最終に観客がどんな態度で演奏を聞いているか、かなり覚えていると書かれています。決して演奏だけに集中している訳ではないのですね。演奏だけに集中しない方が演奏に集中できるのだと思います。

この辺は曲の難易度や曲に対する習熟の度合いによって変わってくるとは思いますが、それだけの余裕が生まれるのはやはり場数を踏むしかないんでしょうか。そうだとしても、上記の練習もかなり役に立つと思います。

中峰秀雄ホームページ

投稿者 kazu : 2005年03月09日 10:41 | トラックバック
コメント
コメントする









名前、アドレスを登録しますか?