2004年12月13日

サイレントギターの功罪

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YAMAHAにサイレントギターという商品がありますね。ボディがない代わりにアンプを内蔵していて、深夜でもヘッドフォンで練習できるというギターです。ARIAにはシンソニードという同様の製品がありますが、出たのはこちらの方が先ですね。これはソロエッテというアメリカのギターのOEMのようです。他にはあまり知られていませんが、より小型のトラベラーというギターがあって、旧型がFender扱いになってごく僅か輸入された際、即座に購入しました。新型もチャンスがあったら買おうと思っています。

さて、実は私がギターを始めたのは、シンソニードの広告を見て「これなら夜中でも練習できるな。それならギターやれるかも」と思ったのがきっかけです。だから、私が最初に手にしたギターはシンソニードです。その後、普通のアコースティックギターも買いましたが、結局、今に至るも、メインギターよりシンソニードを触っている時間の方が長いですね。

サイレントギターやシンソニードは、普段は夜しか練習時間をとれないという人や、昼間でも近所に遠慮しながら弾かなければならないアパート・マンション住まいの人にとっては非常にありがたいものですが、大きな問題もあります。

アコースティックギターというのは、本来、ボディという共鳴箱に弦の振動を伝えて音を発生するものです。どうやっていい音を出すかというのは、畢竟、どうボディを鳴らすかという問題に他なりません。極論すれば、弦というのはボディへ振動を伝えるための単なる介在物といってよいでしょう。その証拠に、試しに6弦を表面版と平行方向に引っ張って離してみましょう。つまり、表面版と完全に平行に弦を振動させる訳です。すると、音はほとんどしません。実際にやってみるまではちょっと信じがたいのですが、どんなに強く振動させても、表面版と平行の振動では音はほとんど発生しません。音が鳴るには、弦の振動に表面版に対して垂直方向のベクトルが含まれていることが絶対条件です。アルアイレとアポヤンドで音色や音量が異なるのもここに由来しています。アポヤンドの音が力強いのは、アポヤンドで作った弦の振動の方が表面版に対して垂直方向のベクトルをより多く含むからです。

ところが、この原則に当てはまらないギターもあって、それがサイレントギターです。サイレントギターにはボディがありません。その代わり、弦の振動を特殊なピックアップやマイクで拾います。(シンソニードにはサドル部分にわずかな空間があるので「エアー感」を確保していると説明されますが、ギターのボディとは比較にならない程度の容積であり、ボディの鳴りとは根本的に違います)

サイレントギターは、ボディを鳴らすのではなく弦の振動を直接(あるいは限りなく直接に近い形で)拾っているのですから、いかにボディを鳴らすかというアコースティックギターの大命題は意味がありません。弦の振動を直接電気信号に変換しているので、どのように弾くかはあまり問題になりません。どんなにへなちょこなピッキングでも一応音は出てしまいます。初心者にありがちな、爪だけで持ち上げるような、あるいは引っかけるようなピッキング…これは隣の弦を弾いてしまわないよう注意しているのでしょうが…でも音は出ます。音が小さければボリュームを上げればいいだけです。弦が死んできたの気付きにくいのも、やはり、音が小さくなったらボリュームを上げれば解決するからでしょう。サイレントギターはもともと音色をどうこういうような楽器ではありませんが、音色の幅がとても狭い楽器でもあります。誰が弾いても同じような音がします。アコースティックギターではボディを上手に鳴らせる人がうまい人なのですが、ボディそのものがないのですから、ピッキングの巧拙はあまり関係ありません。

結構多くの人が経験するようですが、サイレントギターで気持ちよく練習していて、休みの日に久しぶりに生ギターを弾くと、全然音が出ないので愕然とすることがあります。私も同じ体験をして、これには相当驚きました。

つまり、サイレントギターは「うまくなったような気がするギター」でもあります。本当は右手がダメでもうまい人と同じ音がする訳ですから。下手をすると、弾けば弾くほど下手になる可能性すらあります。

さて、結論です。

まず、サイレントギターは右手の訓練には向きません。特にフォームの固まっていない初心者は極力使用を避けるべきでしょう。ただし、左の運指練習には良いと思います。また、フォームが固まっていて右手の問題にも熟知しているベテランが弾く分には問題ないと思います。

それから、これはサイレントギターに限らない問題ですが、メインギターと練習用ギターがあった場合、微妙なネックの差が気になることがあります。どうも、あがりまくってせっぱ詰まってしまい、頭で考えるよりただ指が動いているような状態になった時に、微妙なネックの違いがミスを生むような気がします。弾き込んでいるギターの握りなれたネックは安心感がありますし、そうあるべきでしょうね。そのため、私はシンソニードとメインギターのコリングスのネック幅は揃えてあります。しかし、きちんと測った訳ではないですが、どうもコリングスの方が指板のアールが若干強く、ネックが少し太めな感じです。特に指板の違いは結構大問題で、ことに1弦や6弦は押さえ込む角度に注意しないと滑りやすくなります。まあ、滅多にずるっと滑ってしまうことなどないのですが、緊張して妙な力が入ると何が起こるか分からないですからね。

しかし、やはりコリングスよりシンソニードを触る時間の方が長いという現実は変えようがない訳です。この対策として考えたのは…

本番(といっても私の場合クラスタのフリーコンサートくらいですが)で弾く曲はメインギターでだけ練習する。その後もシンソニードでは弾かない。

シンソニードでは新しく取り組む曲や、フリーコンサートでかける自信のない曲を練習する。

というものです。

要するに、シンソニードとコリングスで練習する曲をはっきりと分けてしまって、どっちつかずみたいな状態をなくす訳です。ネックの慣れという問題と時間配分の問題はこれで解決できるかなと思っています。しかし、メインギターをいかに自分の身体の一部にするか、腕の延長としての道具として完成させるかという問題は解決しませんね。実際、シンソニードの方が抱えた時にしっくり来るのですから困ったものです。

Acoustic Web Magazine|YAMAHA

ariaguitars.com/jp/product info: 製品案内:Acoustic Guitars

投稿者 kazu : 2004年12月13日 20:12 | トラックバック
コメント

kazuさん、こんばんは
ぼくも写真のYAMAHAのスティール弦のサイレントギターを1年ちょっと前から使ってます。サイレントギターは毎晩1時間くらいは弾いてますが、メインギターは週末だけしか弾けませんね(涙)
サイレントギターの功罪ですが、ぼくはサイレントギターでもヘッドフォンは使わず、弦鳴りの音だけで弾いてます。しっかりピッキングすれば練習には十分な音量ですし、ピッキングによる音の差もむしろわかりやすいと思うのです。
実はこうやってPCに向かいながらもサイレントギターを抱えてたりします^^)

Posted by: じゅん1 : 2004年12月14日 22:12

うわっ、やっぱり毎日きちんと練習されてるんですね。そりゃ、そうですよね。…私も頑張らないと。

というか、生活の一部なんでしょうね。私の少しずつその境地に近づきつつあるような気はするんですが。

しかし、ネットしながら弾く気には…うーん(笑)

Posted by: KAZU : 2004年12月15日 09:04
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